正義と看守の脱出

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「君、若いのに達観してるね」 「そうか?」  罪人上がりの下級看守の中には、俺みたいなのが結構いた。隙を見て自由になるために、そこに至るまでの苦労や危険は飲み込む。  一人でなんとか生きなきゃならないという状況にあって、今を耐え抜く以外の選択肢は登場しない。  そういうことを話すのも面白くないだろうと黙り込んでいたら、アストレアが立ち上がった。 「……ごめん、ちょっとトイレ」 「吐くのか?」 「違うよ。消化したものを排出したいだけ」  その言い方もどうかとは思うが、小走りに便所へ向かうのを引き止めるわけにもいかない。  しばらくして、なにやら大きな声がした。 「おい、どうした?」 「なんでもないよ!」  返答の後すぐに戻ってきたアストレアは、なんでもないという割にはやけににやにやしている。 「……なんなんだよ」 「いやいや、さっき初めて自分の姿を見たんだけどね? いやあ、まさかこうなってるとはね」  ああ、ついに気づいてしまったか。  洗面所に鏡でもあったのだろう。  いつかはこの会話をするだろうと予想していたけども、思ったよりかなり早かった。  まあいい。 「まどろっこしいな。言いたいことがあるならさっさと言えよ」 「いやあ、まさか君の幼い頃の姿になっているとは!」  アストレアは俺の幼少期そっくりの容貌をしていた。厳密に言うと細部は違うのだが、まあ他から見ればただの兄弟だろう。 「いいね、とても可愛いよ」 「いらんことを言うな」 「これって十を少し超えたくらいだろう? まだ声も高いし、今みたいに目つきも悪くないし、女の子と言っても通りそうだね!」
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