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くるくると回るアストレアの動きに合わせて、薄い金色の髪がきらきら光る。
まあこいつ、中身は女だからな。
今の俺みたいないかついのよりは、このくらい弱っちい見た目の方が嬉しいのかもしれない。
「服がちょっと上等なのが気になるんだけど、それって聞いてもいい話かな?」
「……没落商家、とでも言っておけば納得するか?」
「ああ、なるほどね。まあそのへんの事情を深くえぐるつもりはないけど、とりあえずユハはこの姿に正義を感じているわけだ」
「……そうらしいな」
なんとも珍妙なことだ。
「ふうん。まあ人の正義なんてそれぞれだからね。こういうのもいいと思うよ」
「それは正義の神が言っていいことなのか?」
「まあ今は神じゃないし」
「神に戻りたいんじゃなかったのかよ」
「戻れるものなら戻りたいけどね。そんなに簡単に叶うことじゃないのは分かってるから、しばらく人間の身体で楽しむよ」
笑ってみせるアストレアだが、淋しいのに違いはなさそうだ。そりゃ俺だって昔に戻れるものなら戻りたい。
けど、まるっきり元の状態を取り戻すのは不可能だ。子供じゃないんだからそれくらいは分かってる。
俺は二本目の酒を開けて、ぐいとあおった。
「あ、ユハだけずるい!」
「子供の飲むもんじゃないだろ。あ、こら、やめろ」
横から奪いにきたアストレアに応戦し、結局半分近く飲まれて仕方なく三本目を開けて、また奪い合って。
気づけば眠りについていた。
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