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正義と看守の故郷
「それで、これからどこへ向かうんだい?」
露店の立ち食い席で遅めの昼飯を取りながら、アストレアは当然の質問をやっとした。
俺が出ている間に真面目に風呂に入ったらしく、髪と身体からほのかに石鹸の香りが漂う。
俺はといえば、干している長袖の代わりに半袖を着ているせいで、少々凍えそうになっている。
「ちょっと田舎に向かう。俺の故郷だ」
「あれ、君って王都出身じゃなかったの?」
「残念ながら違うな。ここから北東へ歩いて三日の小さな村の生まれだ」
「……ということは三日歩き通しなのかな?」
「いや、どうやら既に検問が始まってるらしいからな。馬で夜中を狙って渓谷を突っ切って、あとは砂漠を通る行程でいく」
「じゃあ一晩の辛抱か」
「馬鹿言うな。真東から回り込むことになるから八日くらいかかるぞ」
「八日!?」
「簡単に地図を描くとこんな感じだな」
空になった皿を脇に寄せ、さっき買ってきたざら紙を広げる。そこへざっくりと地形を描き、主要都市や街道の名前を書き入れて。それらの分かりやすい場所はおおむね避けて通っていくわけだが、目印にするにはちょうどいい。
「そのへんって、ものすごい荒れ地だよね。嫌だなあ」
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