正義と看守の故郷

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「お前、イヴァンフォーレの地理分かるのか」 「北の方はなんとなくね。まだ神だった頃に神殿があったあたりだよ」 「……ふうん」  神だった頃の記憶がないんじゃなかったのか? 「それにしても君の字は意外に綺麗だね。商家の坊っちゃまというよりは神職の綴る神託書みたいな神経質な字だけど」 「読めりゃいいんだよ読めりゃ」  人前で字を書くのは苦手だ。いくら気をつけても昔の癖が抜けないせいで、経歴との矛盾に気付かれてしまう。  そもそも看守補で読み書きができる時点でかなり浮いていた。 「ところで、馬を操る自信はないんだけど大丈夫かな」 「お前は俺の後ろで寝てればいいよ」 「それはありがたいね」  ひたすら悪路を進むので、むしろ早々にへばってもらった方が楽で助かる。 「日持ちのする食材と水を買い込んだら、少し金を調達してすぐに出るぞ」 「馬は?」 「もう都合はつけた。引き連れて歩くわけにもいかないんで預かってもらってる」  手持ちの金をかなり使ってしまったので、王都を出る前に補給していく必要がある。ここから先は小さな町ばかりだから、いくら俺でも気づかれる可能性が高い。  そんなヘマをやらかすわけにはいかないから準備は念入りに。  なんせまだ旅の序盤なんだから。
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