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ベッド横の床に食べ物を並べていくと、置くそばからすぐアストレアが手を伸ばす。何を食べても美味いと言って実に幸せそうに食うので、それだけで腹がいっぱいになりそうだ。
酒を一本開けて、乾いた喉に流し込む。ああ、たまらんなこの快感。久しぶりすぎてもうくらくらする。
「俺の分は気にしないで好きなだけ食っていいからな」
「いいの?」
「いいよ、やるよ」
「ありがとう!」
言うが早いか、ひったくるように貪る。
「それにしてもよくそんなに食えるな。三十日以上も絶食してた内臓が受け付ける量じゃないぞ」
「大丈夫だよ。この身体はさっき作り変えたばかりの新品だもの。多少の無茶は聞いてくれる。それより、さっきからこの入れ物全然開かないんだけど手伝ってくれない?」
「はいはい」
受け取った瓶の蓋を軽く捻って、炒り豆を蓋に出してやる。
嬉しそうにつまみ始めるアストレアを横目に、予想より広く豪華な内装を眺めた。
もっと狭い安宿でもよかったんだが、あまり安いところだと怪しまれかねない。少し値段は張っても、観光滞在と言い通せるようにしておいたほうが無難だと判断した。
おかげで風呂も便所もついてるし、やっぱりこれでよかったな。
「そういや、君は随分と砕けた話し方もできるんだね」
「気に障ったなら敬語にしましょうか?」
「いやいや、堅苦しいのは抜きにしよう。ただ、最初の印象と違うものだから気になっただけだよ」
ああ、そういうことか。
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