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プロローグ
もしかして、とは思った。
遠い記憶の中で、晩秋に希望を失ったことだけ覚えていたから。
美しかった故郷は急激に寂れ、加護を与えてくれていた存在は俺たちを見捨てた。いなくなるとすぐに分かるのだ。だって輝きを失ってしまうのだから。
その一柱の恵みは、迫害を受けた心には縋るべき大きな存在だった。
それにさえ見捨てられてしまったら、信じられるのは自分だけ。
自分と、自分が守るものだけ。
もう出会うこともないのだと割り切って、必死でここまで生きてきたというのに、現実は本当に憎らしい。
忘れてしまいたかった哀しい思い出は、思いもよらぬところから俺に手を伸ばした。
そちらがその気なら、全力で握り返そうじゃないか。
これは、やり直しの物語。
消えてしまわぬように足掻き、あわよくばまた輝くための、旅のお話。
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