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正義と看守の逃走計画
少しだけ頭が痛む。
久々だというのに安くて強い酒を選んだのが悪かったらしい。
アストレアは俺の鞄を枕にして気持ちよさそうに眠っている。それを起こさないように立ち上がり、風呂場へ向かう。ザルトじゃ水浴び程度しかできなかったから、ゆっくり熱い湯を浴びたい。せっかくだから服も洗濯しよう。
身体と服を一緒くたに洗いながら、湯をいくら使ってもどやされない喜びに顔がにやける。
こんなに気ままに過ごせるの、本当に久しぶりだ。
勢いに任せて逃げ出してよかった。
ひとしきり垢を落とした後、部屋の隅に服を干しにかかる。開放感があんまりにも強いので、うっかり下半身を隠すのを忘れていた。
アストレアが寝返りを打った気配でそのことに思い至り、慌てて風呂場からタオルを取ってくる。
ひとまず腰を隠して落ち着いたら、まだ所持金を数えていなかったことに気づいた。床に散らばった紙幣を掴んでベッドに上がり、数え始める。
そうこうしているうちに起きたらしいアストレアは、俺を見るなり不機嫌そうに言った。
「ユハだけ風呂に入るなんてずるい」
「お前も入ればいいだろ」
すると今度は自分で入るのは面倒だとぐずる。
お前が面倒だよ。
この調子だと、こいつの探し物も俺が探しに行かなきゃならない気がする。
「お前、みんなの願いを探しに行くって言ってたよな。どうやって探すつもりなんだ?」
「んー、やり方はいろいろあるけど、ユハみたいに自分なりの正義を持ってる人間を見つけていくしかないだろうね。それを信仰として蓄えていけば、いずれは神格も取り戻せるはずだから」
「……それって途方もなく時間がかかるんじゃないのか」
「まあね。でも神殿とか祭があるわけじゃないから、手っ取り早く信仰を再収集する手段がないんだよ。新興宗教よろしく地道な布教活動をするしかない」
「新興宗教ねえ……」
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