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そりゃ、仕事は1日しか持たなかったよ。ネタは落としまくるし、足は滑らすし、転んだ先にたまたま予約注文の品があり、頭から突っ込んだら「もう帰れ」と言われて。時給分くらい寄越せ、ケチんぼめ。あと、もうちょい多目に見てくれてもいいだろうに。世知辛い。本当に散々だ。
Gate'sビルにネットカフェがある。そこに泊まってもいいかな。それか、どっか狭いスナックに転がり込むか。あぁ、でもお風呂入りたいしなぁ。やっぱネカフェかな。河川で野宿はしたくない。森ならまだしも。いや、森も嫌だな。うーん……どうしたものか。
ネオンの街は鮮やかで、あたしをあざ笑うようにキラキラだ。
笑い合う老若男女。それを冷めた目で流し見する。「あーあ、やってらんねぇなぁ」と独り言つ。すると、吐き出した息を見送る間もなく、急に肩を叩かれた。
「ちょっといいかな、君」
確かにここは色街。でも、こんなみすぼらしいTシャツとショートパンツのちんちくりんをチャラいにーちゃんたちが相手にするわけない。振り返れば、やっぱり制服姿の警察官だった。
「嫌です」
即答し、早足に離れる。しかし、この警官はしつこかった。
「嫌です、じゃなくってね。ほら、こういうとこだから未成年がフラフラと出歩いちゃいかんやろ」
補導か。くそ。そりゃあまだ未成年ですけども、もうすぐ成人するし、あたしは子どもじゃない。失礼なヤツだと思い、睨みつけるとそいつも眉をひそめて乱暴に肩を掴んでくる。
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