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第一幕:【博多】代行屋と流浪な猫/2話
【2話 中洲の守神と、はぐれ軍神】
ビルの中は蛍光灯が冷たい雰囲気を醸し出している。細長い建物らしく廊下もエレベーターも狭い。
陰気なビルを降りていけば、途端、眩しい光に目をつぶった。恐る恐るまぶたを開くと、前を行く清水原。こいつ、あたしが逃げるかもしれないとか考えないのだろうか。
立ち止まって辺りを見回すとそこは、中央通りではあるものの色街から離れた場所だった。
「なんしょーと」
神社の鳥居から顔を覗かせて清水原が手招きする。あたしは渋々ゆっくりと鳥居まで行く。
朱い鳥居には「國廣神社」と書かれてあった。そういや、名前も知らなかった。
ビルと駐車場の間に鎮座する小さく狭い神社。参道を行くと、たちまち明度が落ちる。駐車場の奥にビルがあるから社殿は建物の隙間に位置しているのだ。本当に陰気臭い。暗い。でも、隠れるには最適だ。
「よぉ、ウカちゃん」
清水原が社殿の屋根を見上げた。そこには何もない。
「悪いね、急に。ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけどさぁ」
清水原は何もない空間に話しかける。あたしはすぐさま彼のシャツを引っ張った。
「なんもおらんけど」
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