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「いや、いますよ。そこに。ここの主神である倉稲魂命がね」
そう言い、彼はクスリと笑った。あたしはじっとりとした目で睨む。
「そこにいる、と思えば見えます」
「はぁ?」
なにが見えるって言うんだよ……と、言いかけて息を止める。
「あ、見えた? やっと目が合ったねぇ。こんちは、お嬢さん」
目の前に、つややかな白肌の男の子がいた。それは清水原ではなくて、て言うか清水原はその横で笑ってるだけ。突然現れた第三者にあたしの頭は追いつかない。
「はじめまして。僕は倉稲魂命。ウカちゃんって呼んでね」
彼は人懐っこそうな笑みを浮かべてあたしの手を取った。
白いスーツに髪の毛は金に近い茶色。
なんだか……
「ホスト……?」
第一印象はそれだった。キャッチのお兄さんみたいな。中洲にゴロゴロいるよね、こういう人。
「うん、よく言われるー」
この自称、倉稲魂命は面白そうに言うと、あたしの手を取ったまま離してくれない。
「ねぇ、清水原くん。この子、あれだよ。『神好み』ってやつだよ。いい匂いがする」
「あー、なるほど。だから厄がへばりついとったん。納得」
「ちょっと待って」
あたしを置いて話が進んでいくのはいただけない。内容が読めない。
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