93人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、要するに、この人は正真正銘、神様ってこと、なの?」
自分で言って恥ずかしくなる。
神だなんて。そんなのいるわけ……
「そうだよ」
手を握っていた自称、倉稲魂命がサラリと言う。
「もう、清水原くん、回りくどいことやめて見せてやりゃいいじゃん。『神好み』ってことはもうどのみち神様から逃げられないんだし」
もどかしげに言う神様。対し、清水原は口をへの字に曲げて渋っている。
「うーん……まぁねぇ……どっちみち大黒さんに引き渡すつもりやったし、うん、そうしようか」
まとまったらしい。
しかし「引き渡す」ってなんかまた不穏なワード……思わず後ずさる。でも、それは許されない。清水原はあたしの手をすばやく掴んだ。
「言うの忘れてましたね。厄をくっつけた君は神様にとって害悪。君のことはダイコクさんに処理してもらうつもりだったんです」
赤い舌がチロリと見える。その不気味さには逆らえない。固まったままでいる。それまで柔らかで和やかだったのに、この空間だけ温度が下がったよう。
怖い――とっさに、そんな言葉が脳裏をよぎった。
その時、ぐるんと素早く体が一回転する。背負投げされたような空中浮遊のあと、あたしは清水原の肩に担がれていた。
「は? え?」
最初のコメントを投稿しよう!