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「よし、行こうか。んじゃ、またね、ウカちゃん。ありがと」
「ほいほーい」
「いや、待って待って待って! ちょぉ、待ってって!」
ジタバタ逃げようとするも、清水原の腕があたしの足を掴むのでもう振りはらえない。こいつ、ひょろいと思ってたら意外と力強いぞ。
「待ちません」
「待てって言いよろうが! おい! こんなんしてたら誰だって怪しむに決まっとうやろ!」
「あんまし暴れると落ちますよ」
「じゃあ降ろせ!」
いくら人通りが少ない中洲の先端とは言え、今は昼間。
警戒に走る清水原に向かってウカちゃんが手を振っているのが見えるけど、この状況は明らかに異質さを放っていることだろう。
いや、神様? がいること自体、異質なんだけども。
暴れるあたしに、清水原は「まぁまぁ、大丈夫ですから」とやんわり言う。
「君の姿は他人には見えないようになってますから、心配ないんです」
「いや、何言ってんの?」
「君の姿を別の物に置き換えているから、大丈夫大丈夫。不審には思われません」
「………」
何を言ってるのか分からない。でも、確かに道行く人は担がれたあたしにまったく気がつくことはない。
え、これが中洲の普通? 普通なのか、これが。
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