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第一幕:【博多】代行屋と流浪な猫/1話
【1話 流浪な猫は何者も信じない】
近くなる。ブーン、とモーターが動く音が段々と。水の底から上がるように近づいてくる。
すると、視界に光が入り込む。眩しさを感じ、あたしは重いまぶたをこじ開けてみた。
――知らない天井……
いや、まぁ、当たり前なんだけど。
それに知ってる天井だったら、飛び起きてすぐに窓から出ていくし。知らない天井で良かった、とホッと一息。
「………」
いや、いやいや。待った。天井があるってことはつまり室内ってことだから、知らぬ間に見知らぬ部屋に入り込んでグースカ寝てたってことでしょ。マジかよ……あたし、どこまで図太いんだろう……
そろりそろりと起き上がった。どうやら、くたびれたソファに寝ていたらしい。周囲に目をやれば、なんだかごちゃごちゃ物があった。ペン、パソコン、カレンダー、眼鏡、新聞、ニットキャップ、ゴミ、ゴミ、ゴミ、書類、ゴミ、ゴミ、埃……そんなのが散乱していてとにかく汚い。
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