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「………」
互いに距離を取ったままで沈黙。あたしはこの男の言動に不穏を覚えていた。ただただ睨んでおく。
「覚えてない、ですかね……昨日、ほら、夜に」
遠慮がちに訊いてくる。威嚇した野良猫を相手にするように。
ただ、あたしは野良だとしても猫じゃないので、思考を巡らせることにした。
えーと……あたしはどうしてここにいるのか。まだ頭がくらっとするけど、意識もはっきりしてきたしなんとか思い出せそうだ。
***
「もう明日から来なくていいよ」と、回転寿司屋の店長に言われ、つまみ出されて、鼻先でスタッフルームの扉を閉められたとこから始めよう。
あたしは不器用だけど裏方でも表でも仕事ならなんだってやる。今どき珍しいイエスマンの姿勢でいるというのに、何故かバイトが続けられない。
まぁ、そこはいいとして。問題は金だ。その日のねぐらが見つからないというのが面倒。友達に連絡しても「今日は彼氏くるから無理」とか言われるし。
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