俺はあくまで平穏でいたい。

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俺はあくまで平穏でいたい。

《おかけになった電話は、現在、電波の届かないところにいるか、電源が入ってない為かかりません》 「……あんにゃろ。」 淡々と繰り返される無機質な女性の声に、余計に苛立ちが増す。忌々しい気持ちで真っ黒な画面のスマホを見つめては、俺は深く深く溜息を吐いた。 ────既に、鬼ごっこ終了の時刻まで残り時間の半分を切った。旧校舎を後にした俺は「迎えにこい」とだけ連絡を寄越した亮太様を探すべく、辺りを右往左往して必死に駆け回っているのだが、困ったことに何処にも見当たらない。 まあ、そりゃそうだ、簡単に見つかるような所にいたら人気者を探す生徒達も苦労しないだろうし。ただ、あの後から音信不通のまま、亮太からは一切の連絡が途絶えている。 …とはいえ、そこのことに関しては、俺は特に心配していない。何せ亮太様は、空手にテコンドー、柔道、合気道、さらに剣道と、様々な武術を嗜み、その成績も十分に兼ね備わった達人だからだ。そんじょそこらのお坊ちゃまくんや手のつけようがない不良共など、最早お話にならないレベル。つまりはバケモン。 よって、音信不通である原因はだいたい予想がつく。あの無頓着男の事だ、恐らく携帯のバッテリー切れとかいう、しょうもない落ちに違いない。 知り合って1年と数ヶ月足らずだが、そういった理由で亮太と連絡が取れないことが度々あった。いい加減バッテリー持ち歩いてくれと何度言ったことか。滅多にスマホを開かないから必要ないと駄々を捏ねていたけど、こういう時本当に困るんだから! あ、因みに携帯依存……というか、ネットがないと生きていけない系腐男子の俺は、バッテリーを常に持ち歩いている。持ってないと落ち着かないのだ。 だってBL小説とか漫画とか読み漁ってたらすぐに電池無くなっちゃうんだもん、しくしく。 「でも、探すっていってもなぁ……。」 場所を教えられた訳でもないし、ましてや、このだだっ広い学園を闇雲に探したところで見つかる可能性は極めて低い。寧ろゼロ。 一応、旧校舎の中、或いは周辺かと思って回ったけれど、どれも的外れだったようで無駄に体力を削られただけだった。それに5月とはいえ、流石に外は暑い。 ああ、ボクはもう疲れたよ、パトラッシュ。 行く宛もなく、今度は木の茂る森のような中庭を進んでいく。思い当たるとすれば本校舎屋上くらい。彼処の屋上庭園は亮太の数少ないお気に入りの場所なのである。 この道無き道は本校舎への近道。大きな樹木が影となった草むらは、風通りがよく少し涼しい。しかも、木陰は人目につきにくいし、『鬼』に見つかる危険も格段に減る。うんうん、まさに一石二鳥! それにここならあはんムフフな現場が拝めるかもしれないし…期待に胸が高鳴るぜ。
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