一章の一

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 ハーシャッドは、それが気に食わないのだと言う。人間だって、ちゃんと調べてサルだとわかっているのだから、サル扱いしろと言う。よくわからないのだが、自分はちゃんとそれができているらしい。まあ、命名したのが人間なのだから、このねこはフクロウザルという生き物なのだろう、と思っているだけだった。だが、ハーシャッドはそれで十分に満足していた。  立花は地図を見ている。地方で売られているような、白海の辺りを大きくした地図である。仕事にも使っていたものだった。  仕事はある。だから、無性人種たちのスラムよりはましなのだ。畑もあるし、食えなくて死ぬということは少ない。海では小魚も釣れる。協力すればなんとかなった。だが、無性人種はそれをやらない。だから、食べものがなくて死ぬ奴がいる。  四十五年前から、若がえりは同じように利用できるようになっているが、見ためだけで、それなりに病気にはなる。癌なども生じている。  うまい具合にうまくはいっていない。だが、若がえりが可能になってから、まだ四十五年である。これからそういう病気にならないようになったり、治ってしまったり、というのが出てくると思う。  運び屋や人貸し、果物の輸出の手伝いなどを俺はやっていた。  会墨へ来てからもドレウにいた時も、周りにはよく目を配っていた。だから、それなりにものは知っているつもりだ。  少なくとも俺にとっての世界は、本当にそんな感じだった。地球を統べるのは生殖機能を持たない無性人種。そして二か三割が男、または女の有性人種。     
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