一章の一

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 性を持たない子供が初めて生まれてから百三十五年が経っていた。そのたった百年ちょっとで世界はひっくり返っていた。当時の人間なら、絶対にこんなことは信じないと思う。だが実際、この通りだ。追いやられて、こんな国まで作られた。  なんなんだ、会墨って。多分、当時の人間はそう言う。アフリカとヨーロッパの間の島に有性人種の国ができた。一体、誰が信じるだろうか。  という、今。  そんな世界にだ。  せっかく人格変更で人体を再利用し、有性人種を保護し、守ろうとしていたのに。  ドレウで有性人種を生み出す方法が作り出されてしまったのだ。  つまり、無性人種に後天的に性を生じさせることを可能にしたのである。子供が作れるようになる。人口が増やせる。  それはなんとなく、予感させる。  多分また、世界はひっくり返る。
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