一章の一

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 なぜ、俺が教師なんかを。ずっとそんなふうに思っていた。わかってはいた。クレックが教師だっただけである。そう聞いてもいたから、違和感はあったが、言われた通り教師をやり続けていた。有性人種の通っていた学校だった。子供たちの中に、無性人種は一人もいない。校舎はとても小さかった。  迫害を通り越して、有性人種は保護されていたのだった。いや、保護というのもおかしな言い方かもしれない。無性人種と同じように生活できる権利を与えられていたという方が正しいか。時々、過激派が暴れ、有性人種の子供が殺されたなどの話が、普通に街で流れたから、権利というのがちょうどいい言葉だと思う。奴らがその気になれば、すぐに奪われる。あらゆるものをだ。そして、それらを守ってくれるのもまた、奴らだった。  俺は、なぜ俺という存在が生じたのか知っていた。医者なのかそういう係の人間なのかは知らないが、俺を生み出した側の人間が、馬鹿みたいな丁寧さでそれを語ってくれた。もちろん、俺は頼んでいない。知っていたから聞く必要すらないと思っていた。しかし、あの白髪の男はよく聞けと言った。だから俺はちゃんと聞いていた。聞かなければならないと思ったからだ。俺はそういうふうに作られたらしく、嫌でも従った。     
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