一章の一

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 足を突っ込んで雪ごと金網を蹴り、穴を探した。雪が乱れていなくて、それに不安を覚えた。つまり、誰もここを通っていないということになるからだ。冬だからかもしれないとは考えたが、全部塞がれてしまったのかもしれないとも考えた。  遠く、左手の方からぼやけた大きな音を聞いた。  列車が来る。そう思った。  俺はここら辺だと思うところに手を突っ込み、雪の中へ体を入れた。そして、横へ動きながら、網を押した。大人がくぐれるぐらいしか、大きさはない。だから、腰をかがめて首の辺りまで雪にまみれ、穴を探した。  俺はわずかに動く部分を見つけた。立ち上がり、思い切り蹴った。すると、向こうへ突き抜けた。  また、左手で音がした。動いていると思った。俺は足元に頭から入るような格好で、体をうずめた。  雪が月の明かりを返し、線路の辺りは明るくなっていた。その明かりの中に強い光が入ってきた。頭や背中に雪を乗せたまま、俺は見た。  近づいてくる貨物列車。まだ速くない。どこで追いかけるのか。もう、すぐそばまで来ていた。  列車の腹の部分が見えた。尾も見えた。そこで俺は走った。線路に向かって、走った。  そうだ。俺の吐く息は真っ白で、吸うたびに胸の中が痛かったんだ。  列車の頭は一瞬で目の前を通り過ぎた。  さらに、走った。今度は斜めに走った。列車を追いかける格好だ。     
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