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「ねぇ、お姉ちゃん」  時刻は午後10時。  一人暮らしをしている私の家に泊まりにきていた妹が、もう中身のほとんど残っていないマグカップに口をつけながら言った。 「髪の毛、長すぎじゃない?」 「なに? 急に」 「前から思ってたけどさぁ。本当ずっと長いよね」  確かに、私の髪は子供の頃からずっと長い。腰より上になったことがない。  対して、妹の真理恵は頻繁に髪型を変えていた。  私以上に長く伸ばしてみたり、パーマをかけたり、ボブやアシンメトリーにもしていた記憶がある。今は肩のあたりで切り揃えて、内側に巻いている。 「私は真理恵みたいに、器用じゃないから」 「そうかな? 長いほうが手入れ大変じゃない?」 「手入れって言っても……そんなに手をかけてるわけじゃないし」 「まあ、普通に枝毛あるよね」  私の髪を一房手にとって、荒れている部分を目ざとく見つけた妹はニヤリと笑った。 「うるさいなぁ」 「ねえねえ、お姉ちゃん。一度切ってみてよ」 「いや」 「ちょっとは悩んでくれてもいいじゃん! 私の友達に美容師の子がいて、今ならカットの練習したいからタダで切ってくれるって!」 「真理恵の友達には悪いけど、私は切る気ないよ」 「えぇ~。……じゃあさ、最近気になる人とかいないの?」 「いないよ。それより、もう寝よう。明日は早いんだから」  真理恵はまだ何か話したそうにしていたけれど「お彼岸だもんね」と一言残して素直にお客用の布団に潜り込んでくれた。 「おやすみ、お姉ちゃん」  
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