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 やっぱり眠れなくて、私も寝返りを打って妹に背を向ける。  明日は墓参りだ。  シングルマザーだった母を亡くしてもう十年になる。  母が急逝したのは、私と妹が十五歳の時だった。  ちょうど全寮制の高校に入ったばかりで、身の回りのことは周りに助けられながらなんとかなった。  でも、長期休みや進路決定の時に隣にいるのが妹だけだと、私はいつもひどいことを考えてしまう。  どうして、隣にいるのが妹なんだろう。  なんで、母がここにいないんだろう。  妹は可愛いし、とても甘え上手だった。  母が忙しくて何日もまともに会話ができなかった時でさえ、隙を見つけてはベタベタとくっついていた。  私はそれが、とても羨ましかった。  本当は、私も一緒に甘えたかった。  でも大きくなった私たちが二人同時に甘えたりなんかしたら、きっと母の負担になると思ったから、妹が母の相手をしているときはいつも静かに身を引いていた。  我慢すれば。  待っていれば。  きっと私の順番が回ってくる。  そんなふう思って、自分の気持ちを押し殺してきた。  だけど、順番なんて回ってはこなかった。  残されたのは、自分でも持て余すばかりの長い髪。  幼い記憶の中で、妹に向けられていた視線を私が独占できたのは、母が私の髪を結ってくれる時だけ。  妹は器用だったから、小学生の時から自分でヘアーアレンジをしてさっさと友達と登校していた。  私が鏡の前で四苦八苦していると、母がサッとまとめ上げてくれるのだ。  出勤前は忙しいから、そんなに長い時間ではなかったけれど、心配をかけないように良いことばかりを選んで話していたように思う。  母は「そう、よかったわね」と相づちを打ちながら聞いてくれた。  でも、そんな母はもういない。  いくら髪を伸ばしていても、もう誰も私の髪に触れてはくれないのに。  妹の言うとおり、切るべきなのかもしれない。  でもこの髪は、私にとって母との思い出そのものなのだ。  妹みたいに、私は思い出をたくさん持っていないのだし、あんまりうるさく言わないでほしい。 「………」  昔のことを考えていたら、ますます眠れなくなってしまった。  部屋の気配に耳を澄ますと、妹の寝息が聞こえてくる。  私は妹の規則正しい寝息に自分の呼吸を合わせて、自分もできるだけ早く眠れることを祈った。
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