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*** 「晴れて良かったねぇ」  天気は晴天。  私より早く眠りについたはずの妹は、なぜか私より大幅に寝坊した。  お尻をせっついてなんとか準備させて、霊園に着いたときにはすでにたくさんの先客がひしめき合っていた。 「もう、真理恵がすぐ支度しないから」 「あはは、ごめんごめん」  なんでもできるくせに、ちょっと抜けたところのある妹だ。  たとえ失敗しても、持ち前の愛嬌で切り抜けるところも私はあんまり好きじゃない。  私はため息をついて、お墓掃除のための道具を下ろした。 「私が草むしりするから、真理恵はスポンジで磨いてあげて」 「はーい」  真理恵に草むしりを任すと、まだらな芝生が出来上がるのはすでに学習済みだ。  鼻歌交じりに小さなお墓を磨きはじめた真理恵が言う。 「ねえ、お姉ちゃん」 「なに?」 「昨日も言ったけどさ、髪、切らないの?」 「切るつもりはない、って言ったでしょ」 「絶対、似合うのに」  しつこいなぁ。またその話か。  自分の意見が通らないことが許せない妹のことだ。  ここは一度、はっきり言うしかないか。 「嫌なものは、嫌」 「じゃあさ、せめて髪型変えるのは? パーマかけたりアシンメトリーにするだけでもずいぶん印象が……」  だめだ。  全く聞いていない。 「……真理恵、アンタ何が言いたいの?」 「え?」 「印象を変えろって? つまり、今の私じゃダメだって言いたいの?」  草むしりの手を止めて、真理恵に問いかける。 「そ、そんなこと言ってないじゃん……」  真理恵はスポンジを握りしめたまま俯いてしまった。  細い手で握りこまれたスポンジから滴る汚れた水が、地面を濡らしている。 「あ、アタシはただ……お姉ちゃんのことを思って……」 「そう、ありがとう。でも、余計なお世話だから」  これ以上言い合うと喧嘩になってしまう。  いや、もう手遅れなのかもしれないけれど、なんとか形だけはお墓を綺麗にしてお線香を上げた。  母が墓前で悲しんでいる気がする。  ひどい態度をとってしまったという自覚はあった。  でも、私にこんなひどい態度をとらせた妹にも責任はある……なんて、これまたひどいループに入ってしまう。
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