ゴミ屋敷の先生

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こんこん。 微笑を浮かべながらお風呂場にいる新堂先生へ声をかける。 「せんせぇー?人来るんだったら片付けたほうがいいと思いますけどー!」 せっかく作家と分かったので先生と呼んでみることにした。反応が楽しみだ。 「え、まだいたの?!瞬ちゃんもう帰っていいよ、部屋はいいんだあのままで」 スルーされた。やっぱ呼ばれ慣れてるのかな?と思考しつつ「え、いいんですか?もうやっちゃいましたー!」と元気よく返事した。 そう。あまりの汚さにパパッと私はこの家を片付けた。片付けは得意な方だから意外と早く終わった。我ながらずいぶん綺麗にしたと思う。見えないとわかりつつも満面の笑顔で答えるとえっ?!って大きな声とともにびしょ濡れの先生が全裸で飛び出してきたのでつい見てはいけない方向へ視線を向けてしまう。わーお。 「うあああ、、、!!!なん、てことを…ああ、プロットが…書きかけの新作がああああ」 全裸に合わせて情けない声で膝から崩れ落ちる先生を見て、あれ?まずかったのか?とタオルらしきものを持って綺麗に片付けた部屋に戻り先生の体にとりあえずかける。 「ここ!!ここにあったのどこにやったの?!」 かけたタオルは虚しく畳へとぱさり。落ちた。頬の熱を感じる。下の方をなんとか見ないように目を背けながらそこらへんにまとめました!と言うとかつてはきちんと本棚として機能していたであろうホコリのかぶった書籍がずらりと並んだ本棚の下の紙の山へと、飛び込むのではという勢いで向かった。そしてその紙を見て、「ページ順が…」とまた頭を抱える。 相変わらずの全裸でお尻をこちらに向けながら先生は紙をまた散らかしていた。 帰り辛くて30分ほど座って先生を眺めていると、ピンポンと軽快な音を立ててこの家のベルが鳴る。あ、私が出ますねー!と夢中で紙をまとめる先生のお尻にタオルをかけてから玄関へ行き扉を開く。そこには超絶イケてるおじさんがいた。 「おや?部屋を間違えたかな」 全体的に色素の薄いようなカラーでまとめた落ち着いた雰囲気のおじさん。これこれ!こういう人が作家っぽいよね!と思いながら、慌てて、ここは私の部屋じゃなくて…とちらり、全裸のもう一人のおっさんに視線を向けたら、素敵なおじさんは「飛香?!女の子の前でなんて格好でいるんだ!!」と慌てて土足で部屋に入り込んだ。
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