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土足でよかったのか。よかった。そして知り合いなんだ。となんとなくホッとしている。だって全裸のおっさんを知らない人に見られるって相当やばくないですか。
「高見沢!!もうそんな時間かい?」
間の外れた声でずれたメガネをかちゃりとかけ直しながらこちらを振り向いておじさんに反応する先生はぶえくしょいと大きめのくしゃみをして自分が全裸でいることにようやく気づき、状況を把握するとみるみる赤くなる。
慌てた様子で立ち上がりタオルで股間を隠しながらダッシュで風呂場に駆け込んだ。
今度は服をきちんと着てから先生は風呂場から出てきて、申し訳ない!!と勢いよく私に土下座した。
「い、いやー大丈夫ですよー!私が悪いんですし!」
笑いながら頭をあげてくださいと言うと、ありがとう!と真剣な面持ちで返してすぐに高見沢さんに向き直った。
「すまない、30分程待ってくれないか…書き終えるから」
「ああそんなことだろうと思って早めに来たんだよ」
二人そんな会話をすると、先生はシャワーを浴びる前にはボサボサだった、現在濡れて艶のあるストレートの髪をゴムで縛り、机に向き直った。
そして口角を吊り上げなんだか興奮したような様子で私もたまに使う作文の用紙にHBのえんぴつでガリガリと何やら書き出した。私はその姿になぜか目を奪われたのだ。
「すまないね、はいお茶。この湯呑みは綺麗だから」
夢中になっている先生の背中を眺めていると高見沢さんはことり、先ほど綺麗にしたばかりのちゃぶ台に湯呑みを置いた。今度は安心して飲める。
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