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「でもこんな時間だよ。コンビニぐらいしか開いてないよ」
「この近くに食堂があるの。真夜中にしか開いていない食堂」
「そんなとこあるの?」
「そう。知る人ぞ知る食堂。私、そこでアルバイトしてるの。店主が作る料理は絶品なんだから。さぁ行こう」
今度は陽菜子が環奈の手を取った。彼女もうれしそうに「うん!」とうなずく。腕をぶんぶんと振りながら、二人の楽しそうな鼻歌が静かな町に流れていく。真夜中食堂はすぐ近くだ。
陽菜子と環奈は煌々と明かりが灯る食堂へと入った。
「いらっしゃい」
出迎えたのは栄真だった。入ってきた二人を見てぎょっとする。
「こんな時間にJCか? 誘拐でもしてきたのか?」
「な、何バカなこと言ってるんですか? そんなわけないじゃないですか。本当に栄真さんってお坊さんとは思えないですよね」
「内海陽菜子、坊主がみんな良い人だと思うのは間違いだ。生臭坊主に不良坊主、そういう奴はいくらでもいるぞ。坊主だって人間だ。博打もすれば酒も飲む、ロックだって歌うぞ」
「なんですか、それ」
陽菜子は呆れたまなざしで栄真を見る。そしてそのまま彼を無視するような形で二人はカウンターに向かった。環奈をそこに座らせ、陽菜子はバイトの準備をする。
津田はある程度事情を知っているので良いが、栄真はきょとんとしていて何が何だか分からない様子。結局この中学生は誰だといった様子だ。陽菜子は彼にかいつまんで事情を説明した。津田にも今日聞いた話を軽く聞かせる。
話している間、二人の視線は自然と環奈の方へと向けられる。津田も栄真もそろって複雑そうな表情だった。
陽菜子は環奈に水を出し、その横に座った。
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