二食目 二つの肉じゃが

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「ごちそうさまでした」 「ごちそうさまでした。美味しかったです」  満足そうな笑みを浮かべる環奈に津田は嬉しそうだ。本当に美味しく食べてもらうことが好きなようだ。料理人からすれば当たり前のことかもしれないが、彼が笑顔になると食べた方もうれしくなる。  陽菜子も小腹がはり満足だった。うどんの器を片付けようとすると、環奈がじっとその器を見ていた。 「どうかした?」 「いや、あの、うちの新しいお母さん、前野静香さんっていうんだけど」 「うん」 「うどん見て、ふと思い出したんだ。静香さん、ここの出身じゃないの。前作ってもらったうどんはこんなんじゃなかった。もっと……」 「黒かった」  環奈の言葉を途中で引き継いだのは津田だった。環奈がうなずくのを見て、難しい顔になっている。 「つまり、その静香さんは関東の出身か」 「確か、関東のうどん出汁って黒いんですよね?」と陽菜子が言う。 「関東はかつお出汁に醤油多めだからな。一方関西は出汁がメインだから醤油は少なめ。カツオと昆布の合わせ出汁だ。この違いが生まれたのは水の質が違ったかららしい。関東の水では昆布からはうまく出汁が出なかったみたいなんだ。あとは昆布を運んだ北前船の航路も関係しているな。それに加えて、もともと醤油づくりが盛んだったからか、醤油がメインの出汁になったそうだ」 「へぇ~」「へぇ~」陽菜子と環奈からは感嘆の声が漏れ出る。 「関東と関西の食文化の違いはまだまだあるな。例えば、肉じゃがやカレー。関西は主に牛肉を使うが、関東は豚肉だな。これは関西には農村部が多く、農耕用の牛がたくさんいて身近だったかららしい。そして江戸を有する関東は関東平野などの広い土地があり、のちに養豚が盛んになったからという理由がある。諸説あるだろうけどな」 「まだまだあるぞ」  そう言って話に入ってきた栄真はドヤ顔で話す。
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