二食目 二つの肉じゃが

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「ウナギのさばき方も関西と関東で違うぞ。関西は腹開き、関東は背開き。これは関西が商人の町だから、腹を割って話すという言葉は縁起が良いという事で腹開きになった。そして武士の町である江戸、関東では腹開きは切腹を連想させるからと言って背開きになったそうだぞ」 「はぁ~」「へぇ~」二人から飛び出す料理知識に目を丸くする陽菜子と環奈。東と西、同じ日本なのにこれほど違うのも面白い。 「あと最近知って面白かったのは、食パンの好みだな」 「それにも違いがあるんですか?」 「ああ。関西は厚めが好きで関東は薄めが好き。関東には五枚切りなんて無いんだとよ。あれには驚いたなぁ。八枚切りがメジャーらしい。敦賀はほぼ関西だからな。肉じゃがは牛肉だし、パンは五枚か六枚切りがメジャーだな。ちなみに俺は五枚切りが好きだ」  たくさんの違いに驚く陽菜子。世界に行かなくとも、東京に行くだけでカルチャーショックを経験できるのではないかと思ってしまう。日本は島国で地図を見ると小さく見えるが、それでも大きいという事なんだろう。  すると、「肉じゃが、かぁ……」と誰かがつぶやく。みんなの視線が一気に環奈に集まった。注目され、少し照れくさそうな表情の彼女はこんなことを語り出した。 「肉じゃがで思い出したんだけど、静香さんもこの前、肉じゃが作ってくれて」 「でも豚肉だったんだ」 「うん。結構衝撃的だったんだよね。いままで牛肉の方しか食べたこと無かったから。それで一口も食べなかった」 「そう言えば、私も食べたことないなぁ。豚肉の肉じゃが」 「そうだよね。それにね、肉じゃがは、死んだお母さんの料理の中で一番好きだった料理なんだ。だから、なおさらね。それにお母さんとの記憶が、何だか上書きされそうで怖かったんだ」  困った顔を浮かべる環奈に、三人は何とも言えない表情になる。
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