二食目 二つの肉じゃが

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 環奈は問題のお肉を取った。そしてそれを口に運ぶ。もぐもぐと咀嚼し、今度はジャガイモに手を伸ばす。箸で割ると簡単にほろっと崩れる。一口サイズに崩し食べる。環奈は一言もしゃべらず、とりあえず全ての具を食した。彼女の箸が置かれる。 「……美味しい」  ぽろっと漏れたそのひと言。それだけで充分だった。 「美味いだろ?」 「うん、悪くない。でも牛肉のやつよりさっぱりしてるね。少し物足りなさを感じるけど、これもこれでまたいいかな」 「そうだな、牛肉の方が肉のうまみが強いからな。でも美味しかったなら良い。内海さんはどうだ?」  急に感想を求められ、陽菜子は肉をのどに詰まらせそうになりながらもこう答える。 「環奈ちゃんの言う通りさっぱりしてますね。そのおかげか、野菜の味がより感じられる気がします」  すると二人の目の前にまた同じ器が出された。こっちは牛肉の肉じゃがだった。見慣れたビジュアルにどこかホッとする。 「一応こっちも作っておいたんだ。これもこれで美味しい」 「うん」 「初めて見る豚肉の肉じゃが。でも食わず嫌いは良くないな。初めてならなおさらだ。美味しいかどうかなんて食べてみなければわからない。実際に食べてみたら美味しかっただろ。それは新しいお母さんにも言えることなんじゃないか?」 「どういうこと?」 「君は最初から前野さんを拒絶している。新しいお母さんになるかもと言うだけで」 「で、でも」 「もちろんその気持ちも分かる。だけど前野さんの気持ちを考えたことがあるか? 自分だけつらいんじゃない。彼女も君の母親になれるよう努力しているんじゃないのか? 誰かの親になるということは相当な覚悟が必要だ。君の亡くなったお母さんの存在もある。同じように接することが出来るか、代わりになれるだろうか。前野さんも不安でいっぱいのはずだ。そんな彼女の気持ちを考えたことはあるか?」
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