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「あの親子がどうかしたのか?」
「えっ、ああ、いろいろあったんです。だから」
「ふ~ん」
それだけ言うとけいさんは目の前のからあげ定食を食べる。神さまにとっては人間のごたごたなど些末な事なのだろう。興味は一瞬で、とりからの方が大事のようだ。だが、
「あの親子、血は繋がってないな」
「分かるんですか?」
「僕を誰だと思っているんだ、神さまだぞ、神さま」
「そ、そうでした」
けいさんの今日の服装はねずみ色のパーカーにジャージである。誰がどう見ても神さまの服装ではない。いつもこういう系統の服で、寝癖だらけの頭なので、本気で神さまだという事を忘れてしまう。しかし神さまの正装で食堂に来られるのも、困ると言えば困るのだが。
けいさんは環奈親子に再び目をやる。そしてとりからを口に入れながらも、わずかな笑みを浮かべる。
「確かに血は繋がってない。でも、良い縁で結ばれているよ」
陽菜子はもう一度笑い合うあの親子に目を向けた。二人の笑顔を見たらもう大丈夫だ、上手くいくと心からそう思えた。そして気比神宮の偉大なる神様のお墨付きも得た。
「やっぱり、けいさんは凄いですね」
「当たり前だ。それに比べて、お前はあまり縁に恵まれていないな」
「えっ、や、やっぱり……」
ガーンという効果音がぴったりな顔になる陽菜子。神さまからのこの指摘にショックを隠せない。そうだろうとは思っていたが、面と向かって言われるとかなりショックだった。先ほどまで幸せな気分だったのが、一気に地獄へと落とされた気分である。
思い出も無い、縁も無い、自分がどれほど空っぽでスカスカな人間なのかを突きつけられたみたいで胸が痛かった。本気で落ち込む陽菜子に、けいさんはどうでもよさそうな感じにこう言う。
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