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腰に手を当て仏頂面で陽菜子を見下ろす人物。髪を茶色に染め、ばっちり化粧を施し、若々しい生足を惜しげもなく見せつけてくる。その若さあふれる立ち姿、そのまぶしい姿に、羨ましさも込めて陽菜子は顔をしかめる。
これも一種のパワハラのような気がする。いや、ヤングハラスメント、ヤンハラとでも名付けてやろうか。陽菜子が寝起きのしょぼしょぼとした目を向ける相手、それはいとこである三島樹里だった。
「お、おはよう、樹里ちゃん」
「おはようじゃないって、もうこんにちはの時間だから。引きこもりがこんな優雅な生活していちゃダメでしょ」
「そ、そうなんだけど」
「言い訳しない!」
「は、はい!」
樹里は現在高校三年生。陽菜子よりも六つも年下だが、彼女の方が断然しっかりしていた。ギャルっぽい見た目に反して根は真面目で優しい子だ。だからなのか、陽菜子のことも気に掛けてくれて、こうしてときどき家に遊びに来る。
「早く起きて。顔洗って、着替えて」
「ずいぶん急かすけど、なんかあるの?」
「うん? アルプラ行きたい」
「えっと、お金をたかりに来たのかな?」
「引きこもりでもお小遣いぐらいはもらってるんでしょ?」
ニッコリ笑顔を浮かべているが、陽菜子には悪魔の微笑みにしか見えない。今月のお小遣いを使い切ったのだろうか。引きこもりのお小遣いにも手を出してくるとは、いい根性している。
「私だってそんなにお金があるわけじゃないよ」
「そんなの知ってる。でもめったに使わないでしょ?」
「そんなことは無いんだけどなぁ」
「いいから、早く用意してよ。車使えるよね?」
「はい、はい」
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