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"天使の微笑みのベアトリス" わたくしがそんな風に呼ばれるようになったのは、いったいいつからだっただろう。 魔法薬を精製中の鍋をかき混ぜながら、ふとそんな事を考えた。 学院を卒業後、すぐに宮廷魔術師となり、ラ・リューヌの称号を得てからは五年。おそらくはそれからだろう。上級魔術師として、多くの人と接するようになってから。 わたくしにとってこの仕事は、目的を達成するための手段でしかないけれど、やるからにはきちんとやりたい。 魔獣退治にわたくしが行くことはあまりないから、主な仕事は魔法薬の精製になる。そしてその相手は王族と、この宮殿に来るそれなりに地位のある人たち。 そういう人たちには無愛想に接するよりも、常に微笑みを浮かべて柔らかく接していた方が、何かと都合がいい。 つまり、わたくしにとって、その微笑みこそ仮面なのだ。 魔法薬の火を止めて、壁の棚に並べられた薬品を取り、鍋に注ぎ入れる。 ここはわたくしの執務棟の、魔法薬を精製するための部屋。外にはわたくし専用の温室もある。上級魔術師になって良かった事は、自分専用の執務棟兼、研究室を持てる事かもしれない。 執務棟には事務室以外に、小広間もあってお客様を招けるし、仮眠室もある。ここでもじゅうぶん暮らせそうなほど。 帰る家があるから、試した事はないけれど。
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