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「お断りいたしますわ」
と、答えたにもかかわらず、セズはまったく聞こえなかったかのように、「猪退治を手伝ってほしい」と宣う。
「聞こえまして?お断りすると……」
「これやるから」
そう言って自分の横に置いていた袋から、顔くらいの大きさもある石を取り出した。
これがただの石であったなら、問答無用で叩き出すのだけど。
わたくしは思わず身を乗り出して、両手でそれを受け取ってしまう。
「……こんなに大きな螢石初めて見ましたわ。どこでこれを?」
小さなものは安価で手に入るけれど、これほど大きく、見たところ純粋な物は、滅多にお目にかかれない。
螢石は、魔力を込めると淡く輝く。小さなものはお守りとしたり、魔法道具に使われたりもする。
鉱石で作られたわたくしの杖にも、螢石は使われていた。幅広い用途に使われるため、魔術師に重宝されているのだ。
螢石を眺めるわたくしは、よっぽど嬉しそうにしていたのか、セズに苦笑されてしまった。
「うちにあった。けど、こんなのあってもどうしようもねぇし」
「さすが聖五家の方。こんなの呼ばわりだなんて。羨ましいですわ」
セズはこう見えて、由緒正しき聖五家、ジョーヌの生まれ。とはいえ本人は三男で、とっくに家を出ているから関係ない、と言ってはばからない。
彼のこういう所は好ましく、周りから慕われる由縁かもしれない。
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