だい1しょー だいすちとしあわせ

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「お願いがあって来たプギ。あのね、わたあめ姫のおてんじょうびぷれれんとに協力して欲しいの」 「ん? 今日はわたあめちゃんの誕生日か。それはめでたいが」 「これ見てプギ。アタチがハチに教わって作った押し花のしおりプギ!」  チャーコがドヤ顔でポシェットから取り出したのは、可愛らしい桃の小花と四葉のクローバーの押し花だった。 「おお、お前が作ったにして上出来ではないか」 「でもこれじゃインパクトに欠けるから、清水画伯にわたあめ姫の似顔絵を描いてもらえってケイが。ここの端っこにね」 「インパクト=ワシか」 「そうプギ。価値も跳ね上がるって」 「そこが真の狙いだな」  一瞬、土偶顔になった清水画伯だったが、彼もまたわたあめ姫の大ファンである。 「まあいいだろう。わたあめちゃんの誕生日祝いとなれば一肌脱がんわけにもいくまい」 「オッサンのセミヌードなんか見たくないプギ」 「うん、いいからそれを寄こしなさい」  チャーコが押し花のしおりをヒズメに挟んで差し出したその時、悪戯な秋風がビュルンと吹いた。 「プギッ……!?」  ひらりと舞い上がったそのしおり。 「おっと!」  見かけによらず反射神経の良い画伯がそれにパッと手を伸ばし……  グシャッ!! 「え」 「プッ……!」  チャーコのピンクの顔が見る間に青ざめる。  画伯が自分の拳をそうっと広げると、そこには無惨にも握りつぶされた押し花のしおりが。 「プギャアァァアアーー……ッ!?」  町に響き渡るコブタの悲痛な叫び。 「い、いやっ! まてチャーコ、わざとじゃない! ほ、ほら、ここのシワを伸ばして……」 「プギャアアアン! ムッキャーー!」 「あああ、泣くな悪かった! ちょっとはワシの話を聞けーー!」  なだめてもすかしても、コブタの(心の)痛み楽にならざり。  そしてチャーコは涙を散らしながらどこぞへ駆けて行ってしまった。  潰れたしおりを何気なく裏返してみると、 『もものおはなは、だいすちのいみ。よつばはしあわせ。わたあめひめえ』 などといじらしくも下手くそな文字で書かれているではないか。 「参ったぞ……なんとかせにゃ」  こうして、わたあめ姫へのプレゼント大作戦(試練)の幕が切って落とされたのだった……。
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