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1.
秋晴れが続いていた。
九月が幕を閉じ、十月が幕を開ける。まだまだ気温的には暑い日もあったけど、高校ではおおむねみんなが冬服へと衣替えを済ませていた。
僕もまた、転校してから初めて着飾る冬服の感触に、新鮮さを覚えたものさ。学校から帰宅したあと、制服を脱ぐのがもったいなく感じたほどだ。
そう――今は二学期。
この僕・犬飼好人がこの町に引っ越して来て、まだ間もない。
(発端となる『誕生日会』からは、遠い昔のことみたいだ……)
月日が巡るのって早いよね。
当時はまだ、両親と都内に住んでいたっけ。
女友達が誕生日会を開いたので僕も訪問したら、彼女の飼い犬と遭遇した。大の犬嫌いだったボクは恐慌状態に陥り、その犬を殴り飛ばしてしまった――。
以来、僕は「動物に暴力を振るうクズ野郎」と認識され、クラスでイジメを受けた。
逃げるように不登校となった僕は三ヶ月も引きこもり、親と相談した結果、このことを誰も知らない地方都市へ転居し、新たな生活を送ることにした。
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