『狼』をめぐる冒険

77/78
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/239
 どうしたのかな? 「犬飼、お前さぁ……」ややあって口を開く猪瀬くん。「何勝手に一人で解決してるんだよ? 俺も呼べよ! そういう面白いクライマックスはさぁ!」 「お、面白くはなかったけどね……」 「犬派の俺としては、シベリアンハスキーのトリミング風景を見てみたかったぞ!」  ああ、そういうこと……。  一度遭遇したものの退散するしかなかったシベリアンハスキーに、猪瀬くんはリベンジしたかったんだろう。きちんと自分の手で捕まえて、綺麗に毛づくろいする様子を目に焼き付けたかったに違いない。 「何が犬派よ、バカバカしい」反対に軽蔑する辰野さん。「猪瀬なんかが同席しても邪魔なだけでしょ? これで良かったのよ、これで」 「何だと! 辰野は猫派だから、犬派の気持ちが判らないだけだろ。ハスキーのことも全然心配してなさそうだしな」 「はぁ? 違うわよ、勘違いしないでくれる? そもそもこの案件を持って来たのはあたしなのよ、あたし。むしろ犬飼くんは、あたしを同席させるべきだったわ――」 「ま、まぁ落ち着いてよ二人とも……」  僕がいさめようと手を滑り込ませたけど、両者の罵声は収まらなかった。
/239

最初のコメントを投稿しよう!