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「しょーちゃん、みっけ」
彰也は名前をよばれ、びくっとしてこちらに顔を向けた。それから渋々といった様子で社の縁の下から這い出てくる。
「まだ賢悟は見つかってないのか?」
「うん」
彰也よりも先に見つけていたが、そのことはあえて黙り、香奈はこくりと頷いた。
「そうか。あいつ、どこに隠れたんだろうな?」
そう言いながら彰也はおもむろに私の手を握った。私達のかくれんぼにはオリジナルのルールがあった。鬼に見つかった者は鬼と手を繋ぎ、共に行動する。だが、まだ鬼に見つかっていない者が鬼にタッチされる前に見つかった者をタッチすることができれば、鬼に捕まった者は解放されるというものだ。これを成功させると、鬼は目を隠し再び十数えてから探しに行かなければならない。
しかし今まで捕まった者が解放されることはほとんどなかった。たまに彰也が捕まった者を解放させることがあるが、とても難易度の高いルールだった。
そっと彰也の手を握り返す。彰也の手は暑い日でもさらさらしてひんやりと冷たい。
「あいつどこに隠れたんだ」
彰也は空いている手でうざったそうに前髪を?き上げた。
「あっちに行ってみない?」
香奈はわざと賢悟が隠れている場所と、反対の方向を指差す。
「そうだな。そっちに行ってみるか」
二人で香奈が指差した方へ行こうとした時、突然後ろから悲鳴が聞こえた。悲鳴は社の裏から聞こえた。束の間二人は顔を見合わせ、すぐに悲鳴が聞こえた方へ向かった。
「賢悟っ」
彰也は社の裏にあるフェンスを掴み、崖の下に向かって叫んだ。私も崖の下をのぞき込み背筋が凍りついた。賢悟は崖下でぐったりとうつ伏せに転がっていた。
「香奈、お前は大人を呼んで来い。俺は賢悟を助けに行く」
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