あの夏

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決心し、顔を上げる。すると周りの風景が変わっていた。 「ここは…」 「あの時遊んでいた神社だ」 「ああ…」  彰也に言われ、ぼんやりと辺りを見回す。懐かしさと悲しみがこみ上げ、ぐっと唇をかんだ。 「ねえしょうちゃん、けんちゃんは私のこと恨んでいるかな」 「あいつはそういう奴じゃないだろ」 「そうだね」  彰也と再会して初めて笑みを浮かべた。 「けんちゃん、優しいもんね」  彰也の手をそっと握り、一歩踏み出す。社をまわり賢悟が待つ場所へ向かった。 「けんちゃんみっけ」  賢悟は「待ちくたびれたよ」とぼやき、フェンスをよじ登った。賢悟はあの頃とまったく同じ姿をしていた。 「けんちゃん、長く待たせてごめんなさい」  しゃがみこみ、賢悟と目線を合わせる。 「私、ずっと逃げてた。けんちゃんとしょうちゃんのことだけじゃなくて、罪を背負った自分からも」 「つみ?」  賢悟は頭をかしげる。 「けんちゃん、私しょうちゃんが好きだった。だから本当はしょうちゃんの前にけんちゃんを見つけてたんだけど、しょうちゃんと二人きりになりたくて、わざとけんちゃんを無視してしょうちゃんのもとに行ったの。それで、少しでも長くしょうちゃんと二人でいたいと思って、けんちゃんが隠れている場所とは正反対の方へ行ったの。  ごめんなさい。私がそんなこと考えずに先にけんちゃんを見つけていればこんなことにはならなかったのに…」  喉の奥が詰まりうつむく。賢悟は香奈をしばらく見つめていたが、いつもの賢悟からは想像がつかないほどの冷たい声で呟いた。 「ちがうでしょ、かなちゃん」 「え?」  驚いて顔を上げた。彰也もぼうぜんと賢悟を見つめる。 「ぼく、見ちゃったんだよ。あの事故の前の日、香奈ちゃんがしょうちゃんに好きって言っているところを。そしてしょうちゃんが頷くところも。」 「え…あの日けんちゃん、風邪をひいてたんじゃなかったの…」    香奈と彰也は、事故が起る前日もこの神社で遊んでいた。賢悟はその日、風邪をひいて熱が出てしまったため、自宅で寝込んでいた。。賢悟には悪かったが、彰也と二人きりで遊べた香奈は、とても気持ちが高揚していた。二人で鬼ごっこをして遊んだり学校の話をしたりしていると、瞬く間に時間が過ぎ去っていった。
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