役立たず

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役立たず

 大学卒業を間近に控えた山本慎太郎は、大学近くの公園でベンチに腰掛け、ぼんやりと缶コーヒーを飲んでいた。  年の暮れが迫り町は慌ただしかったが、彼自身は実にのほほんとしていた。  大学の単位はほぼ取り終えていたので、とりあえずこのままいけば卒業はできそうだ。  大学の講師陣はしきりに就職先を探しては勧めてくる。  中にはかなりおいしい話もあったが、何となく働く気にならない。  待遇や給料は、大卒の割に条件の良いものもあったが、山本自身がやりたいことかと自問すると、やはりどこかしっくりこなかった。  自分のやりたいことをやるだけで仕事が成り立つのなら、そんな楽なことはない。  そんなことは、彼も重々分かっている。  分かってはいるのだが、それでも何となく働く気になれないのだ。  というか彼の場合、本当にやりたいことなんて別になかったのだ。
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