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山本が手にした一冊の本。
それは『ヨーロッパの風景』という写真集で、フランス、イタリア、ポルトガルなど、ヨーロッパの各地で撮影された風景や人物を国ごとに編集した本だった。
なぜ彼がそれを手にしたかというと、表紙の一部に、色とりどりの傘で飾られたアーケードの風景写真を見つけたからだった。どうやらポルトガルの写真らしい。
彼はしばらく夢中になってそれを眺め、元の位置に戻した。
そして書店を後にして、自分のアパートへと急ぎ足で引き返した。
玄関を開けるとすぐに彼はパソコンの電源を立ち上げ、「ポルトガル 傘 アート」を検索した。
すると、どうだ。色とりどりに彩られた傘の数々。どうやらポルトガルのアゲダという町の写真らしい。
それはまるで虹色のアーケード。300いや、500はあるだろうか?
天井は赤や青、黄色、緑、ピンク、紫など、無数もの広げられた傘で飾られ、それはそれは幻想的な空間を生み出していた。
美しい…。
彼はすっかり心を奪われ、しばしその画像を見入っていた。
胸が高鳴る。そんな感情がまだあったのかと、山本自身も少々驚いていた。
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