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恋人という理想と現実(リカルド)
初めてのデートというものを体験してから、二週間あまりが経過した。
世にいう「恋人」という関係はどこか浮き足立ち、甘く恥ずかしいものだと想像していたリカルドは現在、非常にイライラしていた。
綺麗な眉は寄り、行儀悪く机に肩肘をついてもう片方の指はコンコンと机を叩いている。
「リカルド先生、何かありましたか?」
声にハッとして振り向くと、見回りから帰ってきたエリオットが苦笑しながら側にいる。いないと思っていたからこその悪態だったから、とてもバツの悪いものになってしまった。
それもこれも、全部チェスターが悪い。
そう相手のせいにする一方で、自分のコミュニケーション能力の低さも原因であると冷静に分析もしている。だからこそ、一方的に相手を責められないのだ。
「すみません、少し私的な考え事を」
「珍しいですね、リカルド先生がイライラするなんて。あまり見せないのに」
「……そうでしょうか?」
「? えぇ」
綺麗で明るい緑色の瞳が見開かれ、だが次には柔らかな笑みを作る。エリオットという人もまた、側にいるだけで相手を穏やかにする人物だ。ストイック過ぎる部分と、怒らせなければの話しだが。
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