恋人という理想と現実(リカルド)

2/7
357人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
 溜息が出る。それを見たエリオットが「お茶にしませんか?」と誘ってくれる。  業務中という気持ちも多少はあるが、最近は穏やかなものだ。それに、気持ちを切り替えるのにはいいかもしれない。  提案に乗り、ソファーでお茶を飲み始める。飴色の液体は口に馴染み、美味しい焼き菓子も好みだった。 「何か、深刻な悩みですか?」 「え?」 「いえ。リカルド先生が悩むような事となると、私が力になれるか分からないのですが。でも、聞くだけならできますよ?」  遠慮がちだが、はっきりとものは伝える。こういう能力に欠けている自分を思い、ふとまた嫌いになってしまう。それでもいいと、チェスターは言ってくれるのだが明らかに支障がある。  ここは、胸を借りるべきだろうか。赤裸々な悩みでもあるのだが、エリオットもまた恋人を持つ身なのだから。 「あの……とてもプライベートな悩みなのですが、よろしいでしょうか?」 「はい、どうぞ」 「実は、恋人らしきものができたのですが」 「恋人! らしき?」  妙な言い回しに驚いたり首を傾げたり。エリオットはやや困惑気味にしている。分からないでもない。リカルドだって今の状況を「恋人」と表していいか迷う所なのだ。一番しっくりくる表記が「恋人(仮)」だろうか。 「あの、いつですか?」     
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!