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そのことを正直にいうと、ミハイルは「なるほど」と納得した。
「緊張を強いられる狙撃手の宿命ですね。あなたひとりにクラリス軍は引っかき回された。我が軍の損害もさることながら、あなた自身にも代償は出ていたということか」
「……今は戦争だ。殺すか殺されるかの時代だろう? ミッションを成功させるためなら、こんな痛みくらい取るに足らないことだ。軍人なら、皆、我慢するだろう」
「こんな痛みくらい……ね」
ミハイルは薄く微笑みを浮かべ、クスクス笑う。
「営倉での尋問に耐えられず、意識を失ったあなたが?」
「……」
小馬鹿にするような挑発的な物言いに、ミズキは内心むっとした。
しかし正直なところ、尋問で何をされたかよく覚えていなかった。
ただ彼らの前で何か醜態を見せた事は間違いないのだろうが、なんでこんな清潔なベッドに寝かされているのかもわからない。
自分が何をしたのかこの部屋に来るまでの顛末をミハイルに聞きたかったが、ミハイルとの戦いはすでに始まっている。
こちらの不利になるような会話は避けなければ。
彼から情報を得るには、それなりにうまく立ち回らなければ答えは引き出せない。
そして余計なことも喋ってはならないのだ。
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