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ミズキたちの任務は、この収容所を監視している兵士を狙撃し、監視網に穴を開け、特殊部隊が突入する隙を作ること――そこから一気に収容所を制圧する。
最初のひとつは、クラリス側も事故だと片付けてしまうかもしれない。たまたま警備がゆるかったか、それとも他の理由か。そう、襲撃は偶発的な事件だと考えるはずだ。
しかし、この襲撃が二度、三度と続けば、クラリスは混乱するだろう。疲弊しきったディスタンシアのどこに、そんな力が残されているのか、と。
見えない場所から狙撃される恐怖は、人を混乱させ、冷静さを失わせることもある。
情報を漏らしている内通者の存在を疑って、仲間内で疑心暗鬼になってもらっても構わない。
できればそれで軍が内部分裂でもしてくれれば、余計に襲撃が容易になる。そんな精神的陽動作戦もこの任務には織り込まれていた。
おりしも大寒波がやってきており、この雪は当分の間は続きそうだ。雪のように白い偽装服はミズキたちの姿をうまく隠してくれるが、作戦は短時間で行わないとならない。
時折吹く風に舞い上げられた雪がダイヤモンドダストとなり視界を輝く白い世界に塗りつぶしていく。まるで天使が遊んでいるような幻想的なきらめき。
とはいえ、狙撃手が任務を失敗してはその行く先は死だ。向かう場所には、神すらいるかどうかも定かではない。
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