♯2 拘束

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 ボルトアクションのスナイパーライフルは貫通力こそあるが、もし外せば、弾を装填する間に、相手の軽機関銃がミズキを蜂の巣にするだろう。  ミズキはスナイパーライフルを構えなおし、大きく息を吐いた。 「ターゲット二名、見えるか。ミズキ」 「ああ、見える」  ミズキの視線の先には、黒いオーバーコートに身を包み、軽機関銃を持った兵士が二人いた。だが彼らは鉄条網の内側にいる。 「グスタフ、鉄条網の網の目、どれくらいの大きさがあるかわかる?」 「ちょっと待てよ。見てやる」  グスタフは双眼鏡に持ち替えた。  狙撃手が狙撃に専念できるよう、情報収集を行うのが観測手の仕事だが、時には狙撃手に近寄る敵を始末する役目も負う。  ミズキの狙撃の成功率は、観測手に左右されるといっても過言じゃない。グスタフとはこれまでに言葉を交わしたことすらないが、今回の計画で効果を最大限にするためだと、グスタフ自らがミズキを指名したらしく、初めてパートナーになる。  ミズキとしても意外な任務だった。常に任務はシュトラウスの指揮の下、単独行動だった。  それなのに、今回に限り「アルベルトの部下と同行しろ」と命が下ったのだ。  その準備のために、二週間前、ミズキは軍病院に一時入院をした。 『おまえが逃げたりしないように、アレを身体に埋め込ませてもらった』 『アレ……?』     
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