♯2 拘束

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『クリスタライズだ』  埋め込み手術が終わった後、麻酔から目覚めたミズキはアルベルトから小さなスイッチを渡された。  大きさはキャラメルくらいで、薄いリモコンのような長方形の小さなスイッチ。その角にボールチェーンが通されている。 『これはディスタンシアの兵士なら、みんなが体に埋め込んでいる自爆装置だ。人によって埋め込まれている場所は違うが、おまえのは心臓の近くに埋めている。言い換えれば、これを体内に抱いて戦場に出ることは、一人前のディスタンシア軍人の証といえる』 『心臓……』  どおりで左胸の奥に気になる熱感がある。それはクリスタライズが起動しているためだと、アルベルトは教えてくれた。 『敵に捕らえられ、連行されそうになった時に起動させなさい。絶対におまえは捕まってはならない。いいね、ミズキ』  アルベルトはミズキの頭を優しくなでながら「だが、できる限り生き延びなさい」と続けた。  そのおかげでミズキの胸には手術の傷ができ、そこが疼痛を引き起こしている。  狙撃任務にあたるのに、余計なことで気を取られたくないのだが、これも仕方ないと諦める。     
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