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寒さでなく、グスタフにとっては本気で恐怖の対象であるようだ。しっかりしてそうなパートナーの意外な一面に、ミズキは声を殺してくすくす笑う。
「そんなに笑うなよ。姉貴ら本当に強いんだ。でもミズキだってすげえ成果あげたんだろ? それもひとりで」
「そりゃ軍人なんだもん。ちゃんと成果を上げて、自軍に貢献しないといけないだろ?」
「なんでひとりだったんだ?」
「僕に君のような仲間はいなかったし。それに……」
「それに? なんだよ」
「せめて僕は、あの国の『軍人』でいたいんだ」
押し殺した声で呻くようにこぼすと、グスタフが半ば呆れたようにため息をつく。
「お前、軍人であることにこだわるねえ。軍人は軍人以外、他のものにはなれないだろう? なんでそんなにこだわる? 地位か? 名誉か?」
「グスタフ、ほらそろそろ僕達の仕事をしよう?」
一方的に会話を遮断し、ミズキはまたライフルを構えなおした。
スコープの先、鉄条網の網の目の間に弾丸をくぐらせ、相手の頭にヒットさせなければならない。
狙撃の難易度が格段に上がってしまったなと、ミズキはチッと舌打ちをこぼす。
クラリスの兵士たちは、タバコを吸いながら談笑している。張り詰めた戦場における、わずかな安息、のんびり一服中と言ったところか。
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