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しかし彼らはあと数秒の後、ミズキに頭を吹き飛ばされる。ミズキ自身は彼らに恨みなどないが、これも戦争、皮肉な運命のめぐりあわせと諦めてもらうほかない。
いちいち命の大切さなど意識していては任務をこなせない。自分は心などない、ただの殺戮機械だと言い聞かせる。
心がなければ、罪悪感など感じない。戦場では感情など邪魔だけだ。
一思いにあの世へ送ってやることが、ミズキのせめてもの情けだ。
「ミズキは右側を殺れ。俺は左側の男を殺る」
「オーケー」
幸いにして風はターゲットに向かってまっすぐ追い風だ。着弾地点までの距離は、グスタフの観測によると五二〇メートルほど。
弾は風に乗って速度と飛距離を伸ばすだろう。その分も計算に入れ、ミズキはゆっくりと照準を合わせた。
息を合わせ、正確に――撃つ。
「ならばカウント3で同時に始末だ。いいねグスタフ」
「よし、スリー、ツー……ん?」
グスタフがスコープから目を離した。
「グスタフ?」
ミズキが怪訝そうな声を出すと、グスタフはチッと舌打ちした。
「予定外のゲストが現れたぞ」
「予定外? ひとりくらい増えたって変わらないさ。二人同時に殺って、最後があわくってる間に仕留めればいい」
「そう気色ばむな。まずは確認しよう」
グスタフが双眼鏡を覗き込む。
「……なんだあいつは」
「どうしたのグスタフ」
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