♯2 拘束

12/22
前へ
/600ページ
次へ
 この深い雪の中、グスタフが配置した味方部隊が逃げる時間をどこまで稼げるだろうか? ディスタンシアの人間ならともかく、国外のプライベートフォースの人間ならば、雪にはきっと不慣れだ。  クラリスの兵士は、戦闘能力もさることながら極限下においてのサバイバル能力も高いことでも有名だ。ホワイトアウト、雪崩……白い雪は時として短時間で人の命を奪う。その天候の変化を熟知しているクラリス軍は、猛吹雪の中でもクリアリングを行える。雪に気を取られている敵があっさり狩られたなんて話、この周辺では有名だ。  雪深いこのディスタンシアが侵攻された日も大寒波で大雪が降っていた。  国家公認のラジオ局「ディスタンシアタイムズ」によると、その日は市内中心部でも人の腰くらいの雪が一晩にして積もり、国境付近はさらなる積雪があったという。  クラリス軍はその雪の中を進軍し、底引き網のように横に陣形を作り、ディスタンシアに侵攻、精鋭部隊で結成された各所の国境警備隊をひとり残らず射殺し、進軍ルート上にある町や村で破壊と略奪、そして陵辱の限りを尽くしながら、二日で市内中心部に到達。  ラジオ局は最後まで情勢と避難を市民に伝え続けたが、このラジオ局を含め、政治機能は到達後、たった一日で奪われ、ディスタンシア陥落まではわずか三日……あまりにも早すぎる進軍だった。     
/600ページ

最初のコメントを投稿しよう!

550人が本棚に入れています
本棚に追加