プロローグ

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 全身の力を振り絞り、なんとか返事をすると、男は硬く冷たい声で言った。 「今からおまえに贖罪の機会を与える」 「しょくざい……?」 「おまえの両親に会わせてやると言っている」 「パパとママに……会わせてくれるの……?」  男は頷いて「ああ」と答えた。 「ただし、私の言うことをちゃんと聞くいい子でいるなら、だ。どうだ、約束できるか?」  会いたい。両親に会いたい。こんなに寒くて怖い思いなんかもうたくさんだ。この冷たく冷え切った身体を早く抱きしめてほしい。  もう怖くないのだと。みんなで家に帰りたい。  パパとママと一緒におうちに帰るんだ。  ミズキがはいと頷くと、男はドアの外に顔を向け、顎をしゃくった。それを合図に、後ろ手に拘束された大人が二人入ってきた。突き飛ばされるように歩かされ、ミズキの前に立たされた二人は、紛れもなく自分の両親だ。 「パパ! ママ!」 「誰が近づいていいと言ったんだ」  駆け寄ろうとしたミズキを、兵士は背後から抱きとめる。 「やだ、離して! ママ! パパ!」 「私の言うことを聞くいい子でいるのではなかったのか?」 「だって! だって!」 「あまりわがままを言うと、おまえをここに置いて、パパとママには帰ってもらうぞ。いいのか?」
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