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「言葉通りです」
男はそう言うと、ミズキの髪を掴んだまま、にっこりと微笑む。
「こうして直にお目にかかれるとは光栄だ。ミズキ・ブランケンハイム殿」
「あなたは……」
「初めまして。私の名前はミハイル」
「ミハイル……この辺では聞かない名前だ」
「そうですか。なら黒衣の死神という名なら? こちらのほうがあなた方にはなじみ深いですか?」
「黒衣の……ああっ!」
驚愕にミズキは目を見開いた。
その名前は友軍全体に知れ渡っている恐怖の名だ。
音もなく影と同化するといわれるほど、黒衣の死神はそれと悟らせずにターゲットに近づいて目的を達成する。ターゲットはまさか自分が狙われている上、その周辺に罠を仕掛けられているなど、欠片ほど疑いも思いもしない。
気がついたときにはターゲットは黒衣の死神のマントに抱かれ息絶えている――その死神の罠に、まさか自分がかかっていたとは。しかもこんなふうに身体を拘束されていては、逃げ出すチャンスも、この男を巻き添えにして、クリスタライズを起動することもできない。
「とんでもない有名人に会ってしまった……」
「あなたも人のことは言えない。お噂はかねがね聞いている。ディスタンシアの異色光彩狙撃手殿」
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